「ライ麦畑で捕まえて」アントリー二先生の名言を和訳

「ライ麦畑で捕まえて」について

「ライ麦畑で捕まえて」という作品名を初めて目にしたのは、読書感想文用の書籍を買いに本屋に行った遠い夏の日だったような気がします。

同じような日差しが照りつける32歳の夏の日、駅前のデパートの本屋の洋書コーナーにひとりふらりと立ち寄り、気が付くと手に取っていたのがこの本でした。

主人公のホールデン・コールフィールドは、度重なる学業不振で名門ペンシー高校から退学処分を受けてしまいます。

彼は、寮を出て、親に退学処分の連絡が通知されるまでの3日間をニューヨークの街で彷徨うのですが・・・。

今回は、彼が中学生時代に親交のあった英語教師、アントリー二先生に掛けられた言葉を題材としたいと思います。

But I do say that educated and scholarly men, if they’re brilliant and creative to begin with – which, unfortunately, is rarely the case – tend to leave infinitely more valuable records behind them than men do who are merely brilliant and creative.

( J.D. SALINGER. the CATCHER in the RYE. Little, Brown and Company, 1951. )

和訳

あいにく滅多にないことではあるけども、もし教養があり学問のある人が、そもそも才能に溢れていて想像力がある場合、単に才能に溢れていて想像力がある人よりも、大いにより価値のある業績を残す傾向があるということはやっぱり言えるなぁ。

和訳のポイント

I do say that S V → I do say の do は助動詞で、後ろに来る動詞を強調する役割を果たしています。

educated and scholarly men 

前出のthat節内のS(主部)になっている箇所で、「教養があり学問のある人」と訳しました。

menは「男性」を指しているのではなく、一般的な「人々」を表しています。

現在では、menがこのような意味で使われることは少なく、代わりにpeopleが用いられます。

コラム

1980年代頃から、民族、性別、ジェンダーによる差別をなくそうという考え方は、政治的に正しいという見方、(political correctness、ポリティカルコレクトネス)という考え方が台頭し始めて、fireman → firefigher, actress→actor のように前者よりも、後者の表現を用いるようになっています。

日本でも、看護婦さんとは言わずに、看護師さんと呼ぶように変化してきましたね。

if they’re brilliant and creative to begin with 

・to begin with は「そもそも」、・brilliant 「才気に溢れる」、・creative「想像力がある」という意味です。if節は S V, if S’ V’. 「もしS’ V’なら、S V する。」のように、文を修飾する副詞の働きをすることができます。

ここでは、条件「もし〜なら」を表す、副詞節を導いています。

ー which, unfortunately is rarely the case ー 

この横棒(ー)はダッシュと呼ばれ、挿入句やコメントを加えるのに、インフォーマルな文章でよく使われます。また、unfortunately 「不運にも、あいにく」がコンマで囲われて挿入されています。

このように、ダッシュやコンマで囲われた箇所は、挿入句やコメントであると考えてください。

ーwhichは、,whichと同じで、前節の内容(ここでは、 they’re brilliant and creative to begin with )を指しています。この用法は関係代名詞 which の非制限的用法の一つです。

e.g. He said he was a lawer, which was not true. 「彼は自分は弁護士だと言ったが、それは本当ではなかった。」

,which が he was a lawer を指していますよね。

このように、,which は先行詞ではなく、前節の内容を指すことがあることを覚えておきましょう。

・rarely は「滅多に〜ない」という意味の副詞です。

・case はラテン語のcasus「起きる、落ちること」に由来していて、「場合、実例、事例、事件、訴訟、症例」と多くの意味が派生してきた語です。

be the case の形で使われると、「事実である、真実である」という意味を持ちます。

tend to leave infinitely more valuable records behind them 

tend to leave が V(動詞句)です。

・tend to ~ 「〜する傾向がある、〜しがちである」、

・leave O behind 「O(人・名声など)を残して死ぬ」という意味です。

infinitely more valuable records がO(目的語)に相当する部分です。

・infinitely は副詞で「大いに」の意味です。

A leave more valuable records than B

「AはBよりもより価値のある業績を残す。」と訳しましょう。

ここでは比較級が使われています。

A is 比較級 than B. 「AはBより〜である。」という意味になります。

比較級は young → younger のように -er を付けるか、beautiful → more beautiful のように長い単語は more を付けるか、の2パターンに分けることができます。

AとBを、比較級になる形容詞・副詞を基準として比べています。

e.g. This flower is more beautiful than that one.

「この花はあの花よりも美しい。」

この文では、この花とあの花をbeautiful「美しい」ではなく「美しさ」という基準で比べていますね。

men do who are merely brilliant and creative 

who 以下は men を修飾している関係代名詞ですが、先に do が置かれていますね。

このように、語順が通常の文と変わっていることを倒置と呼びます。

men who are merely brilliant and creative do と読み替えることができますね。

なぜこのように倒置が起こるのかというと、英語では旧情報(重要度が低い)→ 新情報(重要度が高い)という情報の流れがあるからです。

ここでは、do は leave の代動詞なので、旧情報です。なので、先に do を置いてしまって、より重要な情報を後ろに持って行く方が自然なのです。

merely は 副詞で、only や simply と同じ意味の「単に」という意味で使われます。

おわりに

やはり、同じ教員という立場もあって、アントリー二先生の言葉に感銘を受けました。

ただし、この後先生は、主人公のおでこを寝ている間に撫でていました。

そのことで、主人公は先生は flit(同性愛の男を軽蔑的に表した言葉)なのだと思い、ひどく動揺して、先生の家を去って行く。という場面があるのですが・・・。

この件に関しては、生徒に手を出してしまうとんでもない先生だ、と考えたり(現在は、そもそも家の中に招き入れてはいけないし、連絡先を知っていることも不適切である)、ひょっとすると主人公の勘違いかもしれない、と考えたりと想像力が膨らんでしまいます。

しかし、引用部分については、英文解釈の素材になりえる構文とメッセージ性を備えた優れた英文だと思いました。

 

英語学習を頑張りたいけど、なかなか継続できなくて悩んでいるなら、こちらの記事をあわせてお読み下さい。

あわせて読みたい

カズ先生こんにちは!英語コーチのカズです!カバりん英語話せるようになりたいなぁ。カズ先生カバりんはどうして英語を話せるようになりたいの?カバりん入試で必要だし、将来は外資系で働いて、海[…]

最新情報をチェックしよう!